かつては「先発が完投するのが当たり前」とされたプロ野球ですが、近年は完投が珍しい出来事になりました。2025年の秋には、沢村賞の選考基準が見直され、完投数と投球回数の条件が引き下げられることも発表されています。この記事では、完投が減った背景と、投球回の推移を、公開されている記事や資料をもとに整理します。
個々の年の完投数のデータは、NPB公式の記録で確認できます。この記事で扱う数字は、下の出典に掲載されたものに限り、出典のない数字は載せていません。投手のタイトルや規定投球回の基礎はプロ野球の投手タイトルとは?や規定打席・規定投球回とは?でも解説しています。
先に結論|完投は減り、先発は「6回前後」が標準に
- 完投数は、2016年の93から2020年の55へと、5年でほぼ半減した(SPAIA)
- 2020年代の先発の平均投球回は、6回前後まで下がった(プロ野球クロニクル)
- 完投10以上の投手は「シーズンに1〜2人」で、両リーグの完投合計が年50を下回る年も珍しくない(同)
- 沢村賞の選考基準は2026年から、完投10→8、投球回200→180に引き下げられる
データ①|完投数は5年で半減
スポーツ分析メディアSPAIAの記事によれば、NPB全体の完投数は2016年が93、2020年が55で、「わずか5年で半減近く」と表現されています。同記事は、2016〜2020年のあいだに先発の平均投球回と平均投球数がともに減少傾向にあったと述べています(具体的な数値は図表のみに掲載)。
| 年 | 完投数(NPB全体) | 出典 |
|---|---|---|
| 2016年 | 93 | SPAIA |
| 2020年 | 55 | SPAIA |
2021年以降の完投数は、NPB公式の個人・チーム成績で確認できます。年ごとの数字は、公式の記録をご覧ください。
データ②|沢村賞の基準が緩和された
日刊スポーツ系の報道によれば、沢村賞の選考委員会は2025年10月、2026年から基準を見直すと発表しました。完投数は10以上から8以上に、投球回数は200イニング以上から180イニング以上に引き下げられます。選考委員長の堀内恒夫氏は、「近年のプロ野球では完投数や投球イニング数は減少傾向にある」と説明し、中継ぎや抑えの分業化が進んで先発が最後まで投げ切る機会が減っていることを背景に挙げています。
| 項目 | 2025年まで | 2026年から |
|---|---|---|
| 完投数 | 10以上 | 8以上 |
| 投球回数 | 200イニング以上 | 180イニング以上 |
プロ野球クロニクルによれば、「該当者なし」となったのは2019年と2024年です。2023年には、防御率1.75だった村上頌樹投手が、完投数と投球回数の基準を満たせず受賞に至りませんでした。同年のセ・リーグでは、200イニング以上を投げた投手がゼロだったとも紹介されています。
完投が減った理由|どう説明されているか
① 分業化が進んだ
堀内氏の説明どおり、先発、中継ぎ、抑えの役割が分かれた現在は、先発が試合の最後まで投げ切る前提が薄れています。継投の基本は野球の継投とは?先発・中継ぎ・抑えで解説しています。
② 力のある投手が増え、継投が有利になった
SPAIAの記事は、ストレートの平均球速が上がり、145キロ以上を投げる投手の数が5年で倍増したと紹介しています。力のある投手を次々に送り出す継投策が、勝利につながりやすい面があると説明されています。
③ 球数と登板間隔への意識
投手のけが予防や、登板間隔の管理が重視されていることも、よく指摘されます。ただし、これは一般的な見方で、チームごとの方針は公式の発表や報道で確認してください。
投球回の見方|「完投」より「6回3失点」の時代に
先発の平均投球回が6回前後になった現在は、完投そのものよりも、6回以上を投げて3失点以内に抑える「クオリティスタート」のような指標で評価する見方も広がっています。先発の役割は、長いイニングを投げることから、試合の流れを作ることへと変わっているともいえます。
沢村賞の選考で今後、こうした指標を取り入れる案も議論されていると、プロ野球クロニクルは紹介しています。表彰の仕組みはNPBの表彰の選ばれ方も参考になります。
観戦するときの見どころ
- 先発の球数と投球回:6回を投げ切れるか、100球前後でどこまで引っ張るか
- 継投のタイミング:監督がいつ投手を代えるか
- 完投・完封の貴重さ:今は特別な出来事になっている
- 終盤の中継ぎ・抑えの起用:試合の勝敗を分ける場面
プロ野球の中継をじっくり見たい場合は、スカパー!などの有料放送も選択肢のひとつです。
用語の整理|完投・完封・投球回
- 完投:先発投手が交代せず、試合の最後まで1人で投げ切ること
- 完封:完投かつ、相手に1点も与えないこと
- 投球回:投手が投げたイニング数。アウト1つを3分の1回として数える(例:6回2/3)
- 規定投球回:防御率のタイトル争いなどで必要な最低ライン。詳しくは規定打席・規定投球回とは?で解説
完投や投球回の数字は、先発投手の「スタミナ」だけでなく、監督の起用方針や、チームの救援陣の層にも左右されます。数字を見るときは、そうした背景にも目を向けると、見え方が変わります。
数字を読むときの注意点
- 完投数のような「回数」は、リーグ全体の試合数や登板数の影響も受ける
- 2016年と2020年は、2020年が新型コロナの影響で試合数の少ない年だった点に注意(比較する際は試合数の違いを考慮する)
- 平均投球回の数値は、集計の範囲(先発のみ、規定到達者のみなど)で変わる
- 沢村賞の基準変更は、あくまで表彰の目安の変更で、実際の起用方針とは別の話
※2020年の試合数については、NPB公式の記録で確認してください。この記事の数字は出典の記載をそのまま紹介したもので、試合数を調整した数値ではありません。
球場・中継での確かめ方
球場の電光掲示板や中継の画面には、先発投手の投球数が表示されます。球数が100球に近づく頃に、監督や投手コーチの動きに注目すると、継投のタイミングが見えてきます。完投ペースの投手が出た試合では、終盤にブルペンが動くかどうかも見どころです。年間の完投数や投球回は、NPB公式の個人成績ページで投手ごとに確認でき、リーグ全体の傾向をつかむのに役立ちます。
完投の価値が上がった今だからこそ、完投・完封を達成した投手は、その試合のヒーローとして大きく扱われます。ヒーローインタビューや翌日の報道でも、そうした記録が話題になることが多いでしょう。
よくある質問
Q. 完投が減ったのは日本だけですか?
この記事で取り上げた数字はNPBのものです。他国のリーグについては、それぞれの公式記録で確認してください。
Q. 完投がゼロの先発エースはいますか?
個々の投手の完投数は、NPB公式の個人成績で確認できます。年ごとに変わるため、最新の記録をご覧ください。
Q. 沢村賞の基準を満たさないとどうなりますか?
選考委員会は基準を目安とし、総合的に判断してきたと、プロ野球クロニクルは紹介しています。そのため、基準を満たした投手がいても「該当者なし」になる年があります。
まとめ|完投の減少は、野球の役割分担の変化
完投数は2016年の93から2020年の55へと半減し、2020年代の先発は6回前後が標準になりました。沢村賞が基準を緩和するほど、投手の起用は変化しています。観戦では、先発の球数と継投のタイミングに注目すると、試合の見え方が変わります。
出典:SPAIA「完投数の推移」(spaia.jp)、日刊スポーツ系報道「沢村賞 来年から選考基準変更」(daily.co.jp、2025年10月27日)、プロ野球クロニクル「沢村賞の歴史と歴代受賞者」(npbc.media)。2026年10月時点で確認。2021年以降の完投数は、NPB公式で確認してください。


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