フィルダースチョイス(野手選択、略して「野選」)は、守備側が前の走者をアウトにしようとして、結果的に打者走者を生かしてしまうプレーです。エラーではなく、打者の安打にもなりません。この記事では、定義と記録の扱いを、図と表で整理します。
先に結論|野手選択の記録は4つ
- 典型例は、打者走者が一塁セーフになるとき:打者には打数が記録され、安打は記録されません。
- 失策ではありません:野手選択は、エラーに含まれません。
- 犠牲バントのときは、打数にならない:打者には犠打が記録されます。
- 投手の自責点には含まれる:野手選択で出塁した走者が得点すると、自責点になります。
野手選択(フィルダースチョイス)とは?
フェアのゴロを処理した野手が、打者走者を一塁でアウトにする代わりに、前の塁にいる走者をアウトにしようとして、別の塁へ送球します。しかし、その走者をアウトにできず、打者走者や他の走者が余分に進塁した場合を指します。記録上は「野手選択による進塁」と呼びます。
野手選択の場面(図)
記録の扱い|ケース別の早見表
| 場面 | 打者の記録 | 野手・その他 |
|---|---|---|
| 走者をアウトにできた(送球アウト・フォースアウト) | 記録上は野手選択にならない | アウトにした野手に補殺などが記録される |
| 打者走者が一塁セーフになった(最も典型的な野手選択) | 打数が記録される。安打は記録されない | 送球でアウトになった走者がいれば、補殺が記録される |
| 正確に送球しても、一塁で打者をアウトにできなかったと判断された | 打数と安打が記録される | 野手選択ではなく、安打の扱い |
| 悪送球で、正確ならアウトにできたと判断された | 打数が記録される | 送球した野手に失策が記録される |
| 犠牲バントで、打者が生きた | 打数は記録されず、犠打が記録される | 野手選択の扱い |
上の表は、Wikipediaの「野手選択」の説明にもとづいています。判断は、公式記録員が試合の状況を見て行います。
なぜ「安打」にならないのか
安打は、打者が打った打球によって、守備側が普通のプレーでアウトにできず、出塁した場合に記録されます。野手選択は、野手が打者走者ではなく、前の走者を狙ったために、打者が出塁したものです。つまり、打者の打球の結果ではなく、守備側の選択の結果として出塁した、と考えるため、安打にはなりません。
一方で、正確に一塁へ送球しても、打者をアウトにできなかったと判断されれば、安打が記録されます。「野手が前の走者を狙ったか」ではなく、「打者走者を一塁でアウトにできたか」が見られます。
エラー(失策)との違い
| 項目 | 野手選択 | 失策 |
|---|---|---|
| 内容 | 野手が意図して、前の走者を狙った | 野手の守備のミスで、アウトにできなかった |
| 記録 | 失策に含まれない | 野手に失策が記録される |
| 打者の安打 | 記録されない | 記録されない |
| 打者の打数 | 記録される | 記録される(犠牲バント等を除く) |
| 投手の自責点 | 自責点になる | 自責点にならない場合がある |
暴投、捕逸、野手選択は、失策には含まれません。失策は、野手のミスで、アウトにできたはずのプレーを逃したときに記録されます。野手選択は、野手が自分の判断で選んだプレーの結果です。
自責点との関係
野手選択で出塁した走者が得点しても、投手の自責点に含まれます。失策と違って、野手選択は、自責点を除く要因にならないためです。「ゴロを打たれて、野手選択で生きた走者」が生還すると、投手の自責点になります。
盗塁に無関心だった場合も、野手選択
走者が盗塁を試みたとき、守備側が何もせず、無関心だった場合は、その走者に盗塁は記録されません。公認野球規則10.07(g)では、その走者は「野手選択による進塁」と記録されます。
無関心かどうかは、イニング、点差、走者を塁に留める意図の有無、ピックオフを試みたかどうか、などを総合して判断します。2010年6月4日の阪神対オリックス戦では、阪神が5点リードの7回裏に盗塁を試みた場面で、捕手に野手選択が記録されました。
サヨナラの場面の記録の慣例
最終回、または延長の裏で、同点・三塁走者あり・無死または一死の場面を考えます。本塁送球が間に合わず、走者が生還した場合、日本の記録の慣例では、打者に安打が記録されます。これは規則上の定めではなく、慣例とされています。MLBでは、通常どおり野手選択として記録されます。
具体例で確認
例1|走者一塁のゴロで、二塁へ送球
走者一塁の場面で、三塁手が打球を処理し、一塁走者を二塁でアウトにしようと送球しました。しかし、打者が一塁でセーフになりました。このとき、打者には打数のみが記録されます。二塁で走者がアウトになっていれば、三塁手に補殺がつきます。
例2|安打のあとの返球の間に、他の走者が進塁
走者一・二塁で、中堅の前に安打が落ちました。中堅手が、二塁走者の本塁封殺を狙って返球している間に、他の走者が進塁しました。この進塁は「野手選択による進塁」となり、打者の記録は単打(1塁打)になります。
2つの例のように、野手選択は、ゴロのときだけでなく、安打のあとの進塁にも使われる言葉です。「打者の記録」と「走者の進塁の記録」を分けて考えると、分かりやすくなります。
記録を見るときの注意
野手選択かどうかは、公式記録員が、試合の状況を見て判断します。同じようなプレーでも、「打者をアウトにできた送球だったか」「悪送球だったか」で、安打、失策、野手選択のどれになるかが変わります。判定に迷ったときは、試合後の公式記録で確認すると、確実です。
また、スコアボードに表示される「Fc」は、打者と走者がすべて塁に残るケースに限られます。そのため、野手選択が記録されたプレーでも、スコアボードに表示が出ないことがあります。
観戦で見るときのポイント
- ゴロのあと、野手がどこに投げたかを見る:一塁以外へ投げたら、野手選択の可能性があります。
- スコアボードの「安打」の数に、野手選択は含まれない:出塁はしていても、安打は増えません。
- スコアボードの「E」は失策:野手選択は、「E」にはなりません。
- テレビや新聞では、「野選」と書かれることがある:打撃記録の正式な区分ではなく、呼び方の一つです。
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よくある質問
Q. 野手選択は、エラーですか?
いいえ。野手選択は失策に含まれません。
Q. 野手選択で出塁すると、打率はどうなりますか?
打数が1つ増え、安打は増えません。そのため、打率は下がります。
Q. 野手選択でも、出塁率は上がりますか?
出塁率の計算では、分母(打数)には入りますが、分子(安打、四球、死球)には入りません。そのため、出塁率は下がります。
Q. 犠牲バントのときの野手選択は?
打数は記録されず、犠打が記録されます。
まとめ
- 野手選択は、前の走者を狙って、打者走者を生かしてしまうプレー。
- 典型例では、打者に打数がつき、安打はつかない。
- 失策ではなく、野手選択で出た走者の得点は、自責点に含まれる。
- 盗塁に無関心だった場合も、野手選択による進塁と記録される。


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