「あのチームはプレスが強い」と言われるとき、その強さを数字で表す指標のひとつがPPDAです。サッカーの戦術がデータで語られる場面が増え、中継や解説でも目にする機会が増えました。この記事では、PPDAの定義、計算の仕方、数値の読み方、使うときの注意点を、データ提供会社の用語集をもとに整理します。
数式や数値は、Wyscoutのデータ用語集の記載に基づきます。PPDAはデータ会社によって計算に含める守備アクションが異なるため、数値を比べるときは同じ出典どうしで比べてください。サッカーのスタッツ全般はサッカーのスタッツ入門、守備から攻撃への切り替えはトランジションでも解説しています。
PPDAとは|「パスをどれだけ許してから守備をするか」
PPDAは「Passes allowed Per Defensive Action」、つまり1回の守備アクションあたりに相手に許したパス数を表す指標です。相手のプレスの強さを数値化するもので、Wyscoutの用語集によれば、Colin Trainor氏が2014年に考案しました。
- 数値が小さいほど、少ないパスで守備アクションを起こしている(=プレスが強い)
- 数値が大きいほど、相手に多くのパスを回させている(=プレスが弱い、またはあえて引いている)
計算方法|式と対象エリア
Wyscoutの説明では、ピッチの相手側にあたる一部の領域(最後の60%の領域)で起きたイベントだけを対象にします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分子 | その領域で始まった、相手チームのパス数 |
| 分母 | プレスをかけるチームの守備アクション数(ファウル、インターセプト、勝利した守備デュエル、スライディングタックルの合計) |
| 式 | 相手のパス数 ÷ 守備アクション数 |
計算例|リバプール対マンチェスター・ユナイテッド(2019年10月20日)
Wyscoutの用語集には、次の計算例が載っています。マンチェスター・ユナイテッドが対象の領域で出したパスは207本。リバプールの守備アクションは、守備デュエル勝利10、インターセプト16、ファウル11、スライディングタックル3の合計40です。207÷40で、リバプールのPPDAは5.2になります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 相手(マンチェスター・ユナイテッド)のパス数 | 207 |
| リバプールの守備アクション合計 | 40(デュエル勝利10+インターセプト16+ファウル11+スライディング3) |
| PPDA | 207÷40=5.2 |
数値の目安|2018/19シーズンのトップ5リーグ
Wyscoutの用語集は、参考として2018/19シーズンのトップ5リーグの平均を11.01としています。最もPPDAが低い(プレスが強い)のはエイバルの6.72、最も高い(弱い)のはニュルンベルクの18.21です。数字の幅を知ると、「5〜7はかなり強い」「15を超えると相手に自由にパスを回させている」といった見当をつけられます。ただし、これはリーグや年ごとに変わる目安で、固定の基準ではありません。
| 区分 | PPDA(2018/19・トップ5リーグ) |
|---|---|
| 平均 | 11.01 |
| 最も低い(プレスが強い) | エイバル 6.72 |
| 最も高い(プレスが弱い) | ニュルンベルク 18.21 |
PPDAが教えてくれること、教えてくれないこと
わかること
- チームが前線から積極的に奪いに行っているか、構えて待つか
- 同じチームの試合ごと・シーズンごとの守り方の変化
- リーグ内での、プレスのかけ方の相対的な位置
わからないこと
- プレスが「成功」したか(奪えた後にチャンスを作れたか)
- どの地域・どの選手がプレスを担っているか
- 相手が意図的に自陣でパスを回している影響(ゲームの状況は反映されない)
そのため、PPDAは単独で評価せず、ボール奪取位置や被シュート数、奪ってからの攻撃の結果と合わせて見るのが基本です。戦術用語の基礎はサッカーの戦術用語入門をご覧ください。
数値を読むときの注意点
- データ会社ごとに、守備アクションに数えるものが異なる。同じ出典どうしで比較する
- 試合状況の影響を受ける。リードしているチームは構えて守り、PPDAが大きくなりやすい
- 1試合だけの数値はブレが大きい。シーズン平均や複数試合で見る
- 「小さい=強い」が基本だが、ある記事では逆に読める表現も見られる。定義の向きを必ず確認する
※たとえば、ある国内メディアの記事は、PPDAの数値を「大きいほど強い」とも読める形で紹介しており、一般的な定義と食い違っていました。引用するときは、定義の向き(小さいほどプレスが強い)を確認してください。
観戦でのPPDAの活かし方
- 前線の守備が速い試合では、相手がボールを回せていないかに注目する
- 引いて守る時間帯と、前から奪いに行く時間帯の切り替えを見る
- 試合後のスタッツで、PPDAと被シュート数、奪取位置を並べて見る
- チームの戦術の変化(監督交代後など)をシーズンの数字で追う
J1・J2の公式スタッツやデータ提供サイトでも、プレスの強さを示す指標が公開されることがあります。見られる指標の種類は提供元によって異なるため、各サイトの定義をご確認ください。
用語の整理|守備アクションの中身
- 守備デュエル:1対1の競り合い。勝利したものだけが数に入る
- インターセプト:相手のパスを途中で奪うこと
- ファウル:相手を止めるための反則。プレスの結果として生じることがある
- スライディングタックル:スライディングで相手のボールを奪いに行く守備
これらの合計が、PPDAの分母になります。守備アクションが多いほど、同じパス数でも数値は小さくなります。つまり、「相手にあまりパスを回させずに奪う回数が多い」ほど、PPDAは小さくなります。
数値のイメージをつかむ|読み方の目安表
| PPDAのイメージ | 解釈の目安 |
|---|---|
| 5〜7前後 | かなり強いプレス(計算例のリバプール5.2、2018/19のエイバル6.72が近い水準) |
| 10〜12前後 | リーグの平均的な水準(トップ5リーグ平均は11.01) |
| 15以上 | あまりプレスをかけず、相手に自由にパスを回させる(ニュルンベルク18.21) |
※数字の区切りは、用語集に載っている実例を目安にした簡易的な分け方です。リーグや年が変われば水準も変わるため、あくまで感覚をつかむためのものとして使ってください。
他の指標と組み合わせると見えること
たとえば、PPDAが小さいのに失点が多いチームは、前から奪いに行くリスクを背負っている可能性があります。逆に、PPDAが大きいのに失点が少ないチームは、引いて守備ブロックを固めているタイプと考えられます。クリーンシート(無失点)の記録はクリーンシートとはでも解説しています。こうした読み方は仮説であり、実際の試合内容で確かめることが大切です。
シーズンを通じた見方
PPDAは、1試合の数字よりも、複数試合の平均や推移で見ると傾向がつかみやすくなります。監督の交代や、主力選手の入れ替わりがあったときに、PPDAがどう変化したかを追うと、戦術の変化を数字で確認できます。ホームとアウェーで数値が違うチームもあるため、分けて見るのも有効です。観戦の前後に、チームの守り方の特徴を確認する材料として、気軽に使ってみてください。
なお、中継や解説で語られる「プレスが強い」という印象と、PPDAの数字が一致しない場合もあります。印象と数字のズレは、データの定義や、試合の流れによる影響が原因のことが多いため、両方を比べながら見るのがおすすめです。
よくある質問
Q. PPDAが小さいほど勝てますか?
プレスが強いことと勝つことは、別の話です。プレスが強くても、かわされれば失点しやすく、引いて守っても勝つチームもあります。PPDAは戦術の「特徴」を表す数字です。
Q. PPDAはJリーグでも見られますか?
提供元によって、使える指標は違います。各クラブや公式のデータサイトで、利用できる指標と定義を確認してください。
Q. 守備アクションに何が含まれますか?
Wyscoutの用語集では、ファウル、インターセプト、勝利した守備デュエル、スライディングタックルの合計とされています。
まとめ|PPDAは「プレスの強さ」の目安、単独で結論を出さない
PPDAは、相手に許したパス数を守備アクションで割った値で、小さいほどプレスが強いと読みます。計算例のリバプールは5.2、2018/19シーズンのトップ5リーグ平均は11.01でした。観戦では、数字の定義を確認しつつ、実際のプレスの様子とあわせて見ると、理解が深まります。
出典:Wyscout Data Glossary「PPDA」(dataglossary.wyscout.com)。2026年10月時点で確認。他社データとは定義が異なる場合があります。


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